ゲンコツ

上甲 晃/ 2001年01月15日/ デイリーメッセージ

「教科書をよこせ」。そんなデモが、ダッカめ市内で行われたと、ホテルの部屋に朝配られた新聞に大きく紹介されていた。デモの大半は、学生たちである。真剣な顔つきで、こぶしを突き上げている学生たちめ表情に私は注目した。バングラデシュでは、教科書の印刷が大幅こ遅れている。学生たちは、そのことに強く抗議しているのだ。日本では、絶対にありえないことである。国が貧しいことは、普通に学ぶ機会さえもままにならないということなのだ。

私は、「教科書をよこせ」とデモをしている学生たちにある種の感動を覚えながら、帰国の途についた。そして、日本に着いた私を待ち構えていたのは、高知県と高松市での成人式での騒ぎだ。何の主張もなくただ騒ぐだけの日本の若者と、教科書をよこせと街頭でアッピールして歩くバングラデシュの若者たち。あまりの落差に、日本の先行きに対する不安感を深めたことは事実である。

高松市長は、騒いだ著者たちを起訴した。そして、彼らは、大人になったとたんに、「逮捕」というきわめて厳しい洗礼を受けることになってしまったのである。私は、「逮捕」は当然だろうと思う。何をしても、黙って許される、あるいは見過ごされるというのは、決して好ましいことではない。まさに、「教育上、よろしくない」ことである。

自己責任を、日本人はもっとしっかりと自覚しなければならない。自らが”しでかしたこと”に対しては、自ら責任を取る姿勢である。責任をどんなに厳しく問われても、それは覚悟の上でなければならない。責任の問われ方が厳しすぎると泣き言を言わなければならないのなら、初めからしてはならないのだ。私は、日本の団が、民主主義、人権などの言葉を振り回すうちに、本当の平等、平和、博愛の厳しさを忘れて、自分勝手で、やりたい放題をのさばらせるような社会になってしまった気がしてならない。

たまたま、日本に帰って、水上 勉著の『櫻守』という作品を読んだ。桜一筋に人生を送った男たちの物語である。そのなかに、主人企である植木職人のこんな言葉があった。「いまの世に足らんものはゲンコツや。どこの親もゲンコツを忘れた。好きなようにさせるさかい、子は増長する。(略)人間というもんは、山の木と同じで、放っておくとジャングルになる。つるに巻かれてゆがんでしまう」。

ゲンコツのない社会。暴力ではない。本当にその人の将来を思うならば、ゲンコツを振えるには、大人にもよほどの信念と勇気が必要である。今、問われているのは、大人の側の厳しさであり、信念のある生き方なのだ。

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