三点セット

上甲 晃/ 2003年02月24日/ デイリーメッセージ

全国にスーパーは、一万八千社ある。その中で、売上伸び率全国一のスーパーが、福岡県小倉市にある。店の名前を、ハローデイと呼ぶ。ちなみに伸長率二十七パーセント。売上高、二百八十六億円、税引き前の利益は八億四千万の増加である。ちなみに今年の販売見通しは、三百五十億円で、税引き前の利益は十億円を越える見通しだ。十二年間、連続して増収増益は確実である。ハローデイは、この厳しい経営環境下において、奇跡的に業績を伸ばしているのである。

昨日、福岡県小倉市で開催された「生長の家・栄える会」の経営ゼミナールで話をさせていただいた。その席上、私は、この耳寄りの体験談を聞くことができた。ハローデイの社長の加治久典さんは、この日の主催責任者でもある。すなわち、私とは違って、熱心なる生長の家の信者さんなのである。

加治さんの話は、かつて倒産寸前まで追い詰められた時の体験から始まった。「人間、死ぬ気になれば、不可能はない。幸い私は、信仰の世界に生きていたので、どんな苦しい時でも、明るく楽しく生きておればきっといつかは良くなると信じていました」。信じるものがある人は、逆境に強い。とりわけ神を信じられる人は、救われる。

「私は自らの経営を反省しました。そして、お客様に本当に感動していただける店になるためには、社長である私が、まず社員を感動させなければならないと思いました。社長が社員を感動させれば、社員はきっとお客様に感動していただけるような仕事をしてくれるはずだ。そのように思いました。それからはいつも、どうしたら社員を感動させられるか、そればかりを考え続けてきました」、加治さんはどん底から這い上がる時の心境をそのように語ってくれた。

加治さんは、社員を感動させるために、かつて経験のあったケーキ作りを始めた。社員の誕生日や結婚記念日に、メッセージを付けて手作りのケーキをプレゼントした。当初は二百五十人分のケーキを焼いていたが、今は十倍の二千五百個になる。感動の輪が広がっているのだ。

十年ぶりに利益が出た時には、まず社員に還元して、決算賞与を出した。雨漏りする建物やポンコツのクルマを買い換えるよりも前に、社員の感動を大切にした。パートさんまで含めた海外旅行も行なっている。「社員のやる気が経営のすべてです」と、加治さんは、しみじみと語る。「感謝と感動とご先祖さん、これが経営再建の三点セットです」。そんなしめくくりに、会場は大いに沸いた。

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