目の力

上甲 晃/ 2004年08月25日/ デイリーメッセージ

「若い人の目を見たら、その国、その組織、その会社の未来がわかります。若い人達の目に力があり、生き生き、らんらん、ぎらぎらしているとしたら、その国や組織、会社には未来があります。逆に、若い人達の目に力がなく、何となくとろんとしているようでは、その国の未来、その組織や会社の未来は危ういように思います。未来に希望と夢があり、これから努力すれば、それが実現できる状況にあると、自然に目が輝き、力強くなってきます。一方、未来に対して夢も希望もなく、今が良ければいい、自分さえ良ければいいと考えるとしたら、目の輝きや力は失われてしまいます」。私は、講演の中で、持論を展開した。福岡県北九州市に本社のある株式会社さんすいの経営計画会議でのことである。

「若い人の目に力を」と強調する私のすぐ前に一人の若い女性がいた。会場の最前列、しかも一番中央、話をしている私とすぐ向かい合わせの席である。若い女性だが、目に抜群の力がある。並み居る聴衆の中でも、この人の目はひときわ輝いている。私の話にもすばらしい反応をしてくれる。問題提起の話をすると、首を少し傾け、さらに詳しく説明すると、納得して肯(うなず)く。これほど話し甲斐のある人も珍しい。

日本にもこれだけの目をした若い女性がいるのだと、私はうれしくなった。目が輝き、しかも力強い。「日本も捨てたものではない」と思いつつ、しばしば彼女の表情を伺うように、意識して話をした。こんなにも生き生きとして、輝くような雰囲気の女性に恵まれているのは、さんすいの社長である中谷 豊さんの経営のすばらしさであろうと想像したりもした。

ところが、懇親会になって大いに驚いた。「彼女は、ハローワークから紹介された中国の人です」と、中谷さんが言う。私と同じ席に着いている男性達は、一斉に彼女のほうを見る。そしてみんな揃いも揃って、彼女の雰囲気に引き付けられた。

「彼女は、まだ二十三歳か四歳です。とにかく笑顔がすばらしい。また、誰が何を言っても、゛ありがとうございます゛と頭を下げます。既に結婚していて子供もいるのですが、毎日保育所に迎えに行き、それからきちんと食事の準備をしています。本当に気持ちのいい人です。彼女のおかげで、職場の雰囲気も良い方向に変わってきました」と、中谷さんも絶賛する。事実、絶賛に値するだけの魅力を備えた人だ。

講演の中で、私は、「中国の若い人たちの多くが目に輝きと力があるのに対し、日本の若者にはそれが弱い」と言った。あまりにも図星に、我ながら驚いた。「青年の目に輝きと力を」。『青年塾』の合言葉にしたい。

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