セールスマンの良し悪し
朝、地元の金融機関の投資担当責任者が二人、交代のあいさつにやって来た。今までの担当責任者と新任の担当責任者である。二人とも、かつて証券会社に長い間勤めていたことがあるというベテランだ。銀行の窓口でも、証券会社と同じように投資信託商品を扱うようになって、証券会社のOBが、急遽、担当責任者として採用されたのである。
私はずばり、「おたくの銀行でも、投資信託商品を買えるようになったことは、一面、便利です。しかし、私から見たら、販売の仕方がなっていない。端的に言えば、売りっ放しで、フォローがない。その上に、担当者が次から次に変わるので、一体誰を頼ったらいいのか、まったく分からない。だから、今後、投資信託商品をお宅から買うことには躊躇します」と、率直に意見を言った。ベテランの担当責任者は、「同感です」と言う。そして、「機会があったら、私共の銀行のトップにも、ぜひとも、そのことを言ってくださいよ」と言われる。そう言われても、私も困る。
投資信託商品が、値上がりし続けている時には、担当者は、うるさいと思うほど、しょっちゅう訪ねてくる。そして、「次は、この商品はいかがですか。先日の商品は、こんなにも値上がりしました。新しい商品はいかがですか」と、矢の催促だ。ところが、最近のように、激しく値下がりすると、セールスマンはぴたっと来なくなってしまう。それどころか、いつの間にか担当者も交代している。売買の相談をするにも、いったい、誰に相談したらよいのか、分からない。まさに、売りっ放しだ。
私は、「投資信託商品が値上がりしている時には、しきりに訪問し、値下がりすると訪問しなくなるようなセールス活動をしているようでは、絶対に信頼されませんよ。私なら、値下がりした時こそ、セールスマンの腕の発揮しどころだととらえて、果敢に活動すると思います。値下がりすると、お客様は面白くない。セールスマンの顔を見れば、愚痴の一つも言いたくなる。それが嫌さに、お客様の所には行かないというセールスマンは、ダメです。値下がりした時こそ、お客様に寄り添い、お客様の愚痴もしっかりと受け止め、共に辛い思いを共有する。それが、信頼されるセールスマンになれる道だと思います」と、持論を披瀝した。
客だって、セールスマンに愚痴を言ったところで、何の解決にもならないことは、十分に承知しているのだ。それでも、愚痴の一つも言いたくなるのは、誰かに思いをぶつけたいのだ。セールスマンは、常に、お客様の思いに寄り添い、喜びや悲しみを共にする心掛けが必要だ。本物のセールスマンを見分けるのに、逆境期は、絶好のチャンスだ。