同行二人

上甲 晃/ 2002年08月24日/ デイリーメッセージ

四国八十八ヶ所巡礼の旅は、「日本人の心の遍歴」の旅でもあった。私たちの先人は、弘法大師が開いたお遍路を通じて、時には自らの心を見つめ、時には自らを反省し、時には亡き人を思慕し、時には自らを鍛えるため、八十八の寺を訪ね歩く旅を続けてきたのである。まさに、日本人の精神性、そして日本人の宗教心の表れである。

私は、『青年塾』のカリキュラムの一つの柱として、゛日本人の精神゛の探求を掲げてきた。時代がグローバル化すればするほど、私たちは自らの精神の拠って立つところを自覚しなければならないと私は確信している。自らの゛心の足場゛を見失ってしまうと、私たちは、誇りを失い、゛精神的難民゛になってしまう危険性をもってしまう。そんな思いから、「日本人の心の遍歴」を、若い人たちに少しでも触れて欲しいと思い、『青年塾』サマーセミナーを四国・香川県で開催したしだいだ。

今年で四回目の開催になるサマーセミナーは、年に一回、すべての塾生が一堂に会して、絆を深め合うところに最大の目的を求めている。あわせて、開催地は、全国を順番に移動していくことしている。すでに、京都府丹後半島、宮城県石巻市、そして昨年の九州・九重高原で開催した。今年は、四国・香川県。私は、香川県で開催することが決まって以来、「お遍路をみんなで経験しよう」と提案し続けてきた。四国在住の塾生諸君も、異論はなかった。自らの住む地域でのお遍路の存在がどれほど地域に根ざしたものであるかは、若い人たちも十分に承知しているようであった。

今回は、八十八ヶ所のうち、香川県下の三つのお寺を一日かけて回った。八十二番の根香寺(ねごろじ)、八十一番の白峰寺、八十番の国分寺である。お遍路は、数字の順番に回るのが本来のようだが、百人を上回る人たちが歩き切るためには急坂が多くて困難が大きいと判断した実行委員会の諸君が、逆周りにコースを組んだ。

たった三つのお寺を回るだけだが、距離にして十キロを越える。しかも、ほとんどは急な山道である。時々舗装された県道を歩くこともあるが、大半は、お遍路道と呼ばれる山道を歩く。参加者を十人単位に班分けして、全員が手に金剛杖を持ち歩き始めた。私たち夫婦と、塾生の代表、並びに志ネットワークの希望者は、白装束。昔ながらのお遍路さんの正装で歩かせてもらった。全員が、炎天下、無事に歩き通すことができた。そして、それぞれが何かを見つけた様子であった。

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