夢多き男の物語

上甲 晃/ 2004年04月20日/ デイリーメッセージ

岐阜県恵那郡蛭川村で石の仕事をしている岩本哲臣さんは、゛夢多き男゛である。『青年塾』の入塾式が終わった翌日、私は、毎年、塾生諸君を岩本さんに会わせることにしている。今年は、七年目。岩本さんが経営する博石館を訪れて、゛夢多き男゛の新しい夢の話を聞く。「夢無くして、何の人生かな」と思っている私からしたら、岩本さんは、とかく現実世界に埋もれつつある最近の青年たちにとって、゛生きるモデル゛だ。

夢が多いことは、苦労が多いことと、同義語である。夢を持ち、夢を実現するために七転八倒している岩本さん。夢さえ持たなければ、こんなに苦労しなくてすむはずだろうにと思いつつも、なお夢を捨てきれない男の物語。私はいつも胸躍らせて、岩本さんの話を聞いている。

岩本さんは、若いころ、絵描きになりたかったと言う。今も、絵心は確かである。また、発明が好きだ。取得とした特許件数は、百を超えている。石の博物館とも言うべき博石館は、岩本さんの設計であり、建てたのも自分である。絵心は設計に生き、発明は建築途中の工夫の結果である。石の魅力をふんだんに引き出している博石館は、私の好きな空間である。その感性の高さに、いつも驚かされる。

今年の岩本さんの夢は、まず、石の家。石は価格が高いとの常識を打ち破り、二百九十万円、三百九十万円、四百九十万円という破格の価格を実現した。それは、「売らんがための破壊価格」ではない。岩本さんが工夫に工夫を重ね、苦労に苦労を積み上げてきた結果が実現した価格である。「普通に注文すれば、倍以上の価格になる」と、岩本さんは胸を張る。日本の建設業界は、手間賃が高い。その手間賃を極端に圧縮したことが、驚異の価格を生み出したのである。

石の家は、トラックで現地に運ぶ。そして一日で据え付ける。その建て方に、岩本さんの培ってきた特許技術が存分に生きている。話を聞いているだけでも惚れ惚れするほど、工夫の塊だ。外装は本物の石。内装は、本物の木をふんだんに使っている。今はやりの、高気密高断熱構造だ。まだ売り出していないのに、四十五件もの注文が殺到している。

そしてもう一つは、石のベッド。これこそ、究極の健康ベッドである。石の下に湯が通せる構造になっていて、ぽかぽか温かい。自然の石は、昔から、薬として利用されていた。石に触れることは、石のエネルギーを吸収することでもある。石には宇宙のエネルギーが凝縮されている。既に、病院でも、効用は立証済み。石の家に住み、石のベッドに寝ると、長生き間違いなし。岩本さんの夢もまた、さらに大きく膨らむ。

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