熊野人

上甲 晃/ 2003年09月29日/ デイリーメッセージ

「紀伊半島の南部は、兼業農家さえ成り立たなくなっています。農業と何かを兼ねて働きたいと希望しても、その何かに当たる仕事がありません。それほど、すべての産業が衰退しています。例えばかつて盛んであった漁業も、今や高齢化の波に洗われて、後継者がいない。ミカンは、生産過剰と激しい競争のためにジリ貧。だから、人口はどんどんと減っています。ちなみに私が今住んでいる三重県熊野市は、人口わずか二万人。しかも、高齢化先進地域です。この紀南地方開発について、住民の人たちの県政に対する批判はまことに厳しいものがあります。全国にその名を馳せた北川知事をもってしても、お手上げの状態でした」。そんな深刻な地域事情から話を始めたのは、松下政経塾第一期生の橋川史宏氏。『青年塾』熊野講座での話。今、三重県が新設した「地域振興プロデューサー」として、熊野市に住み込み、がんばっている。

地域振興プロデューサーなる仕事は、そもそも苦肉の策であった。数年前まで、紀南地方再開発の決め手として、ミカン畑の真ん中に、温泉とゴルフ場を建設する大計画が進められていた。しかも、その推進方式は、イギリスで成功した民間と行政が一体になった方式。新しいものを積極的に導入することのお得意な北川前知事は、さっそく飛びついた。しかし、民間側は、どんなに計算しても採算性に乗らない計画から下りてしまった。紀南地域の人たちは、途方に暮れた。そして、県庁に対して、「何とかしろ」と迫った。その結果が、地域振興プロデューサーなる新しい仕事だ。「有能な専門家が地域に入り込めば、地域を元気にする方法を考えてくれるかもしれない」との思いだ。三重県伊勢市出身の橋川氏は、公募によってこの仕事に選ばれた。

単身赴任で、地域振興プロデューサーの任に就いた橋川氏は、熊野の人たちの気質と付き合うことを余儀なくされた。「この地域の人たちは、地勢の関係から、外部との交流が少ない。そのために、外の人たちには冷淡というか、なかなか心を開くことができない。反面、自分たちの身内の関係が濃い。親類縁者が、がんじがらめに絡まって住んでいます。選挙は、親類縁者の数が多ければ多いほど、勝つ。そんな土地柄です。だから、まずよそ者に冷淡な壁を潜り抜けて、結束の固い縁者の中に入り込まなければなりません。今、その努力をしています。熊野の人たちの気質を理解しなければ、何もできないと承知しています。少し時間はかかるでしょうが、大いなる仮説、大胆な仮説を立て、大きな夢を描きつつ、一歩一歩固めていきます」。橋川氏は、きっぱりと言い切った。

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納豆

上甲 晃/ 2003年07月19日/ デイリーメッセージ

「この三十年間で、消費量は八倍になりました。納豆の消費量はずっと増え続けています。ちなみに、同じ大豆製品である豆腐や油揚

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日本人の心

上甲 晃/ 2003年07月17日/ デイリーメッセージ

「愚か、愚かだね」。そう言いながら、顔を曇らせるのは、奈良市内にある春日大社の宮司の葉室頼昭さん。私がかねてからお会いし

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