隔世の感

上甲 晃/ 2004年03月01日/ デイリーメッセージ

『青年塾』も八年目を迎えた。もちろん私としては、過去八年間、その時々に全力投球してきたつもりである。手抜きした記憶など、まったく無い。しかし、一期生の諸君らと時々話すと、「私たちのころと今とでは、隔世の感がありますね」と言う。私は、毎年、積み上げているのでそのことが良くわからないが、一期生の人たちは、自分の学んだころと比較できるので、゛隔世の感゛などと言った言葉が口を衝いて出てくるのだろう。

゛隔世の感゛と言われるほど、『青年塾』の研修は、充実してきているのだ。何よりも、゛主体的に学ぶ゛姿勢、そして自主性においては、゛隔世の感゛があると、私も思う。

『青年塾』の二大行事と言えば、出発式、そして入塾式。かつては、私が先頭に立ち、必死でお膳立てをしていた。今、私はほとんど゛左団扇゛(ひだりうちわ)である。ほとんど具体的なことについて、手出しも口出しもすることはない。「任せっきり」と言い切っても良いほど、信頼して塾生諸君に任せている。また塾生諸君は、見事に期待に応えて、「そこまでやるか」と言うほどに完璧を期している。下見も、何度繰り返されていることか。中には、深夜に準備会に駆けつける人もいるそうだ。

繰り返して行われる下見やリハーサルには、お金も時間もかかるはずだ。それでも、自らの負担感について、一度も不平不満の声が聞こえてきたことは無い。その事実一つを取ってみても、『青年塾』は、゛志の場゛として成長してきていることがわかる。

そして、塾生の間に、主体性が確立してくると、より高い目標の学びができるようになる。時事用語、歴史用語の研究についても、驚くほどレベルが高い。それは塾生諸君が優秀であるとか、ないとかの問題ではない。やる気が高まると、レベルが高くなる表れである。そして八期生は、とうとう八冊の課題図書に挑戦することにした。その八冊は、司馬遼太郎著「坂の上の雲」の文庫本。近代日本の文学では最高峰と言われるこの作品は、今年開戦百年記念を迎えた日露戦争を題材にしている。

第一期生のころ、八冊の文庫本が課題図書などと言ったら、みんなどれほど驚いたことであろう。八年の積み上げが、八冊の文庫本読破に挑戦するレベルまで上がってきたのだ。これもまた、゛隔世の感゛あり。そして八期生は、来年の一月、初めて愛媛県松山市、すなわち「坂の上の雲」の舞台で修了研修を行う。私も、これには大いに燃えている。先輩諸氏にも、ぜひとも、八冊の課題図書の読破と松山での研修には参加して欲しいと願っている。さらなる゛隔世の感゛を求めて。

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