国家破産

上甲 晃/ 2004年10月22日/ デイリーメッセージ

「浅井さんの警告が的中しそうな雰囲気になりましたね。喜ぶべきか、悲しむべきか複雑な心境です」と、開口一番、私は浅井さんに声をかけた。昨晩は、浅井 隆さんが主催する勉強会で話をさせてもらった。浅井 隆さんは、間もなく日本の国は破産することを警告し続けている人だ。最近、書店の店頭に立つと、彼が著した「二千三年、日本国破産」と題するシリーズの書籍が山積みされている。

゛国家破産゛とは、物騒な事態である。こんなにも豊かな暮らしを楽しんでいる私たちに、一番無関係の事態であると、日本人の大半は考えている。にもかかわらず、間もなく、国が破産すると予言するのだから、衝撃的である。この日、私が話をする前に、浅井さんが話をする予定になっていた。せっかくの機会でもあり、妻と共に少し早い目に出かけて、国家破産のシナリオを確かめた。

「夜中の十二時、発表があります。預金封鎖です。この時間なら、朝刊に間に合う。国民は銀行に預金引き下ろしに走れない。そのような時間帯を狙って、預金を封鎖するのです。すべてはそこから始まります。私はかつて、預金封鎖など、一万分の一の確率しかないと思っていました。しかし、今日現在、三十パーセントの確率を予想しています。みなさん、墜落する確率が三十パーセントの飛行機に乗りますか」。浅井さんは、長い間、゛狼少年゛だと揶揄されてきた。起こりそうもない事態をことさら騒ぎ立てているというわけだ。その゛狼少年が、正直な少年として受け入れられつつあるのだ。浅井さんの一言一言に耳を傾ける聴衆の表情は真剣そのもの。うなずく人も多い。

膨大なる国家借金、にもかかわらず平然と継続される無駄な公共投資。早晩、国家の財政が破綻をすることは、目に見えている。そのときに、国家の膨大な穴埋めをするのに狙われているのが、千兆円を超える国民の金融財産である。国家が破産すると、国民の金融資産を、国家の財政に回す以外に方法はない。だから、国民の預金を封鎖して、新円を導入するシナリオが予想されている。

本当は、日本の国はそんなにのんびりと構えられるような状況にない。私の危機感は、「こんなにも危ないのに、危ないと受け止めていない国民が多すぎる」こと。危機は認識するところから、回避の道が開く。「そんなことあるはずがない」と思いたい気持ちもわかる。私は講演を通じて強調した。「歴史の流れ、時代の動きをしっかりと学ぶこと。自己防衛の第一は、事態を理解することから始まる」と強調した。

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