早足は過去の話

上甲 晃/ 2003年12月22日/ デイリーメッセージ

江本さんと大阪府知事選挙に出馬を表明した参議院議員の江本さんと二時間ほど話した。選挙情勢や応援のあり方について話し合うのが目的であった。江本さんは、高知県出身。野球選手として、南海ホークス、阪神タイガースに在籍していた関係から、関西とも縁が深い。当然のことながら、関西の事情、あるいは大阪の事情についてもなかなか詳しい。

その江本さんが、面白いことを言った。「かつて大阪の人は歩くのが早いと思っていました。とにかくせっかちで、足が速い。私なども、大阪の街を歩いていると、いつも追い立てられるようで、何となくせわしい気がしたものです。ところが、久しぶりに大阪に戻ってきて気が付いたことは、大阪の人たちの歩くスピードが非常に遅くなったことです。私から見ると、とろとろ、もたもた歩いているような気がしてなりません」。

なるほど、かつて大阪の人たちは、歩くスピードが速いことで有名であった。歩くスピードが速いことは、゛生き馬の目を抜く゛ような大阪の商売人の積極的な姿勢の現われでもあったように思う。大阪では、車を運転している人は、まっすぐ前の信号を見ないで、横の信号を見ていると言われた。そして、横の信号が黄色になれば、前の信号が赤であっても発進するとも言われた。それもまた、大阪人のせっかちさの現れであると受け止められてきた。そのことは、大阪に来て人たちから、ずいぶん指摘されて記憶がある。

大阪の人たちの歩くのが遅くなったばかりか、とろとろ歩いていると聞いて、大阪の低迷ぶりはそんなところにも現れているのかと、驚いた。確かに、人間、活力がなくなれば、歩き方にまで力がなくなることはうなずける。逆に、元気な時は、さっそうと、そしてはつらつと早足で歩くものだ。元気がなくなってくると、うつむき加減になり、とぼとぼとした歩き方になるのも当然の結果かもしれない。

また江本さんはこんなことも言った。「大阪の電車に乗る時には、みんな競い合うように扉に殺到した。ところが、最近は、きちんと列を作って並んでいる。これにも驚きました。礼儀正しくなり、マナーが良くなったわけですが、何となく大阪の活力のなさにも見えてくるから不思議です」。

私も同感だ。大阪の人たちに特有のぎらぎらとした活力が消えている。
その中にずっといると、気が付きにくいことも、しばらくぶりに訪問したりすると、変化に気が付く。江本さんが大阪に帰ってきて、知事選挙に出るのに期待したい。変化を通じて、大阪の問題点をしっかりと見てもらえば、新しい政治への期待が高まる。

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