ジレンマ

上甲 晃/ 2008年11月21日/ デイリーメッセージ

飯尾毅さん「本当に良い酢を使っていただいたら、味はもとより、健康にも良い。健康に良ければ病気をしないわけだから、長い目で見て、医療費も安く済む。だから、買い求める時には、多少、値段が高くても、良い酢を選ぶほうが得だと思うのですが」と、言葉を濁すのは、京都府宮津市でお酢を作る飯尾醸造の社長・飯尾 毅さん。「目先の損得、価格で九割のお客様は買い求められるように思います」と、飯尾さんは肩を落とす。残念無念の心境なのだ。
飯尾さんは、゛こだわりの酢゛作りに取り組んできた。シェアは、〇・〇五パーセント。全国四百社中の四十番目位の位置にある。しかし、自らの作るお酢については、日本一だという誇りが、飯尾さんにはある。何よりも、無農薬の新米を原材料に使うこと自体、他のメーカーの追随を許さない。しかも、原材料は、一般的な酢のメーカーの六倍から、七倍も使っている。製造時間は、自然に発酵するために、速醸酢の八倍から十倍掛けている。飯尾さんは、三年前、゛他の追随を許さない良質の酢゛を維持し続けるため、価格を大手同等製品の一・五倍から一・七五倍に上げた。「本当に良いお酢を、誰にでも買い求めていただける価格で販売したい」と考えてきた飯尾さんにすれば、断腸の思いだった。
価格を引き上げた結果、てきめんに影響が出た。それ以来、販売は低迷して、三年連続、前年を下回っている。飯尾さんの悔しい思いの原因はそこにある。「良いお酢を作っている限り、必ず世間に認めてもらえる」との信念が、時には、揺れる。名門、゛富士酢゛のピンチだ。
それにしても、飯尾醸造のお酢は、天下一品である。地元の棚田で収穫された、無農薬の新米を原材料に使うために、地元の農家から、最高級を誇る新潟・魚沼産の価格を上回る、日本一高い価格で米を買い取っている。米代だけではない。米作りに必要な資材・機材の費用、農協の手数料も、すべて農家に代わって負担している。コストダウンと、自らの利益確保のために、一番安い米を仕入れることに目の色を変えているメーカーからすれば、飯尾さんのこだわりは、とても信じられない。
それでも、最近、棚田の米を作る農家が減少してきている。そのために、飯尾醸造さんでは、社員が稲作作りに取り組むようになった。そこまでしてでも、無農薬の新米にこだわっているのだ。飯尾醸造さんには、営業部門がない。また、宣伝広告もしない。「良いものを手ごろな価格で」と思うから、お酢作りに全精力を注ぎ込んで、宣伝や営業活動をしない。本物には、どんなことがあっても、生き残って欲しいものである。

志ネットワークに参加を希望される方へ

毎朝七時にメッセージを希望される方
毎朝七時に、「上甲晃の一日一信」を携帯メルマガとして送信しています。登録料は無料です。
申し込み方法 ibamoto@star7 に空メールを送って下さい。
申し込みの様式が送られます。
毎月デイリーメッセージ [月刊の冊子]を希望される方
毎日1400字のデイリーメッセージ一ヶ月分を冊子にしてお送りします。
年間購読料は6,000 円(送料込)です。
申し込み方法 郵便振替口座 00240-9-48648 かPayPay銀行すずめ支店 (002)7005173 に6,000円をお振込みください。その際、送付先とお名前を明記してください。
毎日1400字のデイリーメッセージ [インターネット]を希望される方
毎日1400字のデイリーメッセージをインターネットで即日購読したい方は10,000円を下記にお振込みください。インターネット『青年塾』にも自動的に参加できます。
申し込み方法 郵便振替口座 00240-9-48648 かPayPay銀行すずめ支店 (002)7005173 に10,000円をお振込みください。その際、送付先とお名前を明記してください。
インターネット青年塾に参加を希望される方
上記の(3)と同じ手続きです。
すべての活動に参加を希望される方
上記すべての活動に参加し、さらに隔月刊の「志レポート」の購読を希望される特別会員は、18,000円を下記にお振込みください。
申し込み方法 郵便振替口座 00240-9-48648 かPayPay銀行すずめ支店 (002)7005173 に18,000円をお振込みください。

師の教え

上甲 晃/ 2008年09月19日/ デイリーメッセージ

「地位、肩書きで、人は切れない。人を切るとは、人を魅了するといった意味だ」。そんな強烈な一言を、私の背骨に叩き込んだのは

続きを読む