歴史的な砂嵐が、私たちに一つの悪い予感を与えた「第二回中国理解講座」であった。中国西部の砂漠は、今年の雨不足で乾燥が激しく、砂塵が舞い上がった。その砂塵は、砂漠の東に広がる中国大陸を覆い尽くした。そればかりか、昨日広島に行くと、そこでもかつてない黄砂に見舞われたことを教えられた。そして今朝のNHKニュースは、北海道にまで黄砂が広がっていたことを報じていた。
中国で起きた事態が、対岸の火事ではなく、日本にも直接的な影響を与えた典型的なケースである。黄砂ほど、中国大陸での事態が日本に及ぼす影響をわかりやすく示すものはないかもしれない。
黄砂にすっぽりと覆い尽くされた長春の街を歩きながら、私は、二十一世紀の日本と中国の関係の深さを思い知らされる思いがした。これからは、黄砂にとどまらない。商品という゛黄砂゛も日本に忍び寄っている。不法就労者という゛黄砂゛も各地に広がっている。
中国社会科学院日本研究所の主任研究員は、「中国はようやく目を覚ましました。もうこれからは眠るわけにはいかないし、眠ることはない」と胸を張った。今までの中国のイメージをもって、これからの中国を見ていたのでは、大きな間違いを起こすであろう。
中国の変化の目覚しさには、目を見張るものがある。遼東半島の先端にある大連市は、外資導入により経済発展を目指す戦略地域である。そうした戦略地域では、外資の進出を容易にするために、港湾施設を整え、街を再開発し、道路や住宅をどんどんとリニューアルしている。驚くのは、スピードの速さだ。その上に、徹底して街をきれいにすることに力を注いでいるので、中心街にはごみ一つ落ちていない。政治のリーダーシップの強烈さを見せ付けられる。道路一つ、滑走路一本作るのに、何十年もかかる日本とは余りにも違いすぎる。一年見なければ、すっかりと姿形が変わってしまっている。
日本の資本が入り込んでいる企業には、日本人の常勤の人はいない。「日本人が一人いると、二十人分の給料になる。それでは、とてもソロバンに合いません。技術は徹底して教えて、中国人の手で経営してもらう」、それが中国の合弁事業の実態である。日増しに、安くて、良い商品が中国でもできるようになるのは当然だろう。
「中国から目を離せない」。中国理解講座第二回目の参加者に共通した感想であろう。その一方、歴史の深い傷跡が、いかに深刻かも実感できる。日本人としての課題が身にしみて見える講座だった。