サイレンスカー

上甲 晃/ 2000年10月23日/ デイリーメッセージ

新幹線に、サイレンスカーなる車両が誕生した。レールスターと名付けられたひかり号に一両だけ連結されている。先週、ほかの車両が、すべて満員であったため、サイレンスカ-に、初めて乗った。サイレンス、すなわち静かさを売り物にしているだけに、車内放送がまったくない。いつもあまりにも過剰な車内放送に悩まされてきた身には、いささか頼りない気さえする。

おかげで、熟睡してしまった。まったく目がさめないのだ。こんな経験は初めてだ。いつもなら、車内放送、車内販売など、とにかくうるさくて仕方ない。うとうとしかかると、音や声に妨げられてしまう。ところがこの日は、姫路を過ぎて眠りこけ、目がさめたのが小郡駅。途中の岡山、広島に止まったのにも気がつかなかった。静かさのありがたみを実感した次第である。

最近、日本人は、音に対して鈍感になってきているような気がする。携帯電話などの騒音は論外。大阪では一番格式の高いはずの心斎橋商店街を歩いてみて驚いた。多くの店が、がなりたてるように、スピーカーのボリュムを最大限に上げている。隣の人の話もろくに聞こえない。聞こえないから、ますます音や声が大きくなる。

電車の中の声も、辺り構わずだ。行楽に出かけるおばさんの団体の隣に座ると、静かな旅はあきらめなければならない。旅館のなかを歩く人たちの足音の大きさも耳につく。要するに、周りのことなど何も気にしていないということなのだ。「つつしみ」などという美学は、もはや死語なのだろうか。

作家の城山三郎さんは、神奈川県茅ヶ崎市に住んでおられる。私の勤務していた松下政経塾のそばに居宅がある。松下政経塾が創設間もないころ、城山さんが塾にやってこられた。朝、夕に鳴る鐘がやかましいとお叱りをいただいたのである。鐘の音までやかましいと言われることに、最初は抵抗を感じた。鐘ぐらいいいじゃないかと。ところが、近所の団地からも苦情が続出した。夜勤明けに眠れない、赤ん坊が目を覚ますなど、理由はさまざまだった。私は、反省しきりであった。早速、鐘の音を低くした。

城山さんは、音のうるさい店では、買い物をしないそうだ。「無神経な店」に、良質のサービスは期待できないと言い切る。たしかに、周りのことを考えれば、自然のうちに音に対しても、配慮が行き届くのは当然だろう。

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